既に皆さんご承知の通り、2015年JBTOP50シリーズは劇的な大逆転で青木大介の年間優勝をもって
先日幕を閉じた。
誰もが「大逆転」「奇跡」などと形容するこの幕切れは、まさしくその形容通りの内容であった。
ここで今年のシリーズを振り返りたい。
まずは初戦の九州遠賀川戦。
本人も認める「苦手」とするフィールドである。
過去納得する成績を残せていない。ましてや予選落ちすら経験している。
昨年行われたクライマックスシリーズELITE5では同じく遠賀川で優勝しているとはいえ、
同じ釣りが通用するはずもないことは明らかであったためだ。
第1戦は、予選2日を苦しみ抜き30位ぎりぎりで予選通過。
最終日も苦しい展開は変わらず、総合27位で終了する。
年間優勝を目指す者としては間違いなく「出遅れた」初戦であるのは明らかだった。
第2戦は茨城県北浦。
ミッドスポーン戦初日は10位とまずまずのスタートを切ったものの、2日目に失速。
予選を19位で折り返し迎えた最終日。単日10位のウエイトを持ち込み何とか見せ場を作った。
総合成績は13位でフィニッシュ。この時点で年間優勝争いに食い込めるかは、
次戦の旧吉野川戦に託されることになり、仮に上位に食い込めなかった場合は
年間優勝争いから脱落することを意味していた。
ちなみに第2戦の優勝者は五十嵐誠プロである。
迎えた第3戦徳島県旧吉野川戦。
近年バスの減少がささやかれ続けているフィールド。
今回も非常にタフな展開が予想された。
初日は5位と絶好のポジションにつけた青木。決して見えている展開ではなかった。
2日目は単日2位のウエイトをたたき出し、予選を首位で折り返す。
ちなみに2位には福島プロ、3位には河辺プロ、4位には勢いすさまじい五十嵐誠プロが続く。
恐ろしい存在である。
最終日。実は青木のシリーズ戦での優勝は2011年の旭川戦以来ない。
誰しもが青木の久々の優勝を期待していた。
そんな中、福島プロはやはり釣ってくるのである。
青木も異次元の展開だったが、福島プロは最終日単日2位のウエイトを持ち込み
逆転優勝をもぎ取る。
もう一度言う、青木が外してわけではなく福島プロがその先の異次元を発揮した
故の勝利だった。
ただ、この戦いで2位に食い込んだことは間違いなく年間優勝を争ううえで非常に
大きな収穫となった。
年間レースを争う選手も絞り込まれた第4戦。福島県桧原湖。
第4戦を前にして青木の年間ランキングは5位まで上がっていた。
年間優勝の可能性が一気に現実味を帯びてきた第4戦を前にして、
ピリピリムードかと思いきや、いつもにも増して穏やかな雰囲気だったように感じる。
初日を終え単日2位の最高の滑り出し。ビッグラージを混ぜての5キロ台をたたき出した。
しかし、2日目は初日トップの今江プロも青木もウエイトを落とす。
予選総合結果は8位となったものの、今シーズンのルール変更で最終日は総ウエイトの
順位へと変更されることにより、3日目のスタート時点で今江プロに次ぐ2位でスタートすることとなった。
予選においては初日のビッグラージに助けられた結果だった。
最終日。3キロ中盤のウエイトをしっかり持ち込みまとめたものの、暫定年間1位の五十嵐誠プロが
4キロを持ち込み逆転優勝。
またしても青木は優勝を逃し3位表彰台となった。
この時点で年間争いは1位五十嵐誠選手。2位が青木となる。
しかしながら、1位との間には28ptという大差がついた。
この差は実はほぼ絶望的な数字であることは言うまでもなかった。
誰もが正直なところ、第4戦が終わった時点で五十嵐誠プロの年間優勝を
ほぼ確信していただろう。
28pt差であるものの、最終戦終了時点で同ポイントで並んだ場合、年間2勝を挙げている
五十嵐誠プロに軍配が上がるのだ。つまり最終戦を戦ううえで、青木は五十嵐誠プロに
対して29pt差をつけて終えなければならない。
数字上だけで申し上げれば、仮に青木が優勝(60pt)した場合でも、五十嵐誠プロは29位(32pt)
で年間優勝を勝ち取る。
要は五十嵐誠プロが予選を通過した段階で、青木の年間優勝は厳しい状況となるわけだ。
さて、最終戦を迎えるにあたって去年のあの悪夢を思い出された方も多かったのでないだろうか。
去年の最終戦、年間暫定首位で迎えた青木はまさかの大失速で予選落ち。
最終日は天候不良でキャンセルとなり、年間暫定首位からELITE5出場権ぎりぎりの5位まで転落した。
去年も優勝はなかったものの、安定した成績を積み重ね、最終戦前に首位に上り詰めた。
今年は序盤なかなか成績が振るわず苦戦するも3戦目以降は表彰台を連発し首位に迫る。
昨年の同時期の青木は明らかにプレッシャーをしっかり感じ、取り乱すこともなければ
いつもと変わらない様相ではあったが、しかし明らかに醸し出す空気感は違った。
今年の最終戦前は驚くほど安定していた。
去年の殺気すら漂う空気感は皆無だった。
ひょっとするとひょっとするかもしれない。そう思わせる雰囲気だった。
最終戦。茨城県霞ヶ浦水系。
開催1週間前に豪雨災害に見舞われた影響もあり大増水の霞ヶ浦北浦水系。
波乱の予感である。
ここまでくれば青木に残されたプランはただ一つ。
優勝を目指す以外にないのだ。
豪雨災害に続きチリ沖地震の津波の影響が懸念される中何とか初日のスタートは切られた。
初日のウエイインはお祭り騒ぎだった。
澳原プロが6755キロのスーパーハイウエイトを持ち込み大いに盛り上がり、さらには
初日ウエイイン率100%を記録した。
その中で青木は3960gを持ち込み初日9位。
ここで気になるのが五十嵐誠プロの順位である。初日27位と微妙なポジションにつけた。
この時点ではまだまだ年間争いは五十嵐誠プロが優位である。
2日目。青木、福島プロ、澳原プロが圧巻の4キロ台を持ち込む。
これにより予選は1位澳原プロ、2位福島プロ、3位青木となった。
そして会場に動揺が走る。五十嵐誠プロがあろうことか予選落ちを喫したのだ。
しかも42位と大幅に順位を落とした。
ここから青木大介の年間優勝への勢いは一気に加速する。
しかし、ここで新たなライバルの出現である。
もともと小森プロとは年間ランキングで第4戦終了時に3pt差と僅差であったことから、
五十嵐誠プロの脱落により、大差の大逆転劇が、3日目決勝は青木と小森プロとの
僅差の一騎打ちへと変わった。
見ている側の立場からすればこれほど面白い展開はない。
最終戦最終日。穏やかだった。本当に穏やかだった。
1年のシリーズの総決算がスタートした。
最終日の帰着は予選より2時間早い13時。
本当のぎりぎりまで選手はキャストし続ける。
青木大介はリミットメイクしていると、オフィシャルツイッターで確認できていた。
気になるのは小森プロのウエイトだ。情報では2本とのこと。
これは!!との気持ちが先行するが抑えつつ、青木の予想ウエイトを本人に確認する。
2キロジャストくらいとの回答。青木のウエイト予想は大概500グラムほど下回った数字が
多い。だいたい青木のウエイトは読めた、5本で2500ほど。
ここで小森プロのウエイトが2本で1600ほどであることが判明した。
この時点で2015年JBTOP50 年間王者は青木大介にほぼ確定した格好だ。
青木のウエイイン。5本で2716g。予想通りのウエイトだった。
最終戦は最終日に単日トップウエイトを記録した北プロが、圧倒的なウエイト差で予選を通過したものの、
最終日にまさかの大失速を喫した澳原プロを大逆転。勝利をものにした。
年間優勝はこちらも奇跡的な大逆転劇で青木大介が獲得。
冒頭に申しあげた「大逆転」「奇跡」という形容がこれで少しはお分かりいただけただろうか。
さて、毎年毎年シリーズ開幕前には必ず年間優勝獲得を宣言する青木。
自らをプレッシャーで鼓舞するためなのだが、ファンやスポンサーからの期待は常人では背負うことはできないだろう。
その精神力はまさに王者の証である。
昨年の最終戦、暫定首位から転落し失意のどん底で迎えたELITE5で優勝。
その後プラクティスを満足いく形で終えられなかったバサーオールスタークラシックながら見事に
優勝。
鋼の精神力を発揮した結果だろう。
年間表彰の壇上で青木は淡々としていた。
それは「やっと」獲れたという安堵とともに、同じく「やっと」という極度の疲労感だったのかもしれない。
彼本来の不断の努力で勝ち得たことであることを認識しつつも、ファンの声援、スポンサーからのサポート、
そして、普段あまり語ることのない家族への感謝を口にしたことからも、いかに7年間の道のりが険しい
ものだったかを物語る。実に自然な口調であった。
そして欠かせない存在であるのが、素晴らしいコンペティターの存在である。
今期も最後まで年間優勝を争った小森プロや福島プロ、五十嵐プロをはじめ、
簡単に勝たせてくれない存在が、より青木を強くするのだ。
最終戦の直後。メディアやファンサービスを終えた青木に単刀直入に今後の目標を
聞いた。
既に国内主要タイトルは獲りつくしたわけだ。どこにモチベーションをもっていくのか
単純に確認したかった。
返ってきた答えは「3回目の年間優勝を狙う」だそうである。
そして、休む間もなく青木の2015年シーズンは佳境へと突入した。
バサーオールスタークラシック、ELIRE5、JBクラシックとビッグタイトルがこれからも続く。
残されたタイトル戦でも、ファンの皆様の熱い声援を期待したい。